​エッセイ 本気のコミュニティづくり 

まちなかの、
小さな
「こころの拠り所」を
開き続ける

 

 Feb 1, 2021  

       @ matsudo-city, Chiba-ken

​この文章は、非営利型一般社団法人あんしん地域見守りネットのニュースレター「かけはし」5号(2022年7月30日発行)の「コロナ禍の地域活動」のコーナーに寄稿したものです。

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まちなかの小さな「こころの拠り所」を開き続ける

 こころの相談と生活上の相談は、通常、別々の場所で別々の専門家が対応するというのが実情です。でも本来は、こころの相談も生活の相談も同時に受けられる場所が、日々の暮らしと地続きの空間に、ふらっと立ち寄れる「駆け込み寺」のようにあった方がいい。そんな思いから、「ここくら相談室」を3年前にスタートしました。「ここくら」は「こころとくらし」の略で、ソーシャルワークと心理支援の双方を、来訪者のニーズに合わせて提供しています。
 具体的な社会資源を紹介したり同行支援をすることもあれば、心理療法をすることもあります。本を読んだり絵をかきながら対話をし、そのプロセスの中で自分の課題を解決する糸口を見つける手助けをすることもあります。

 

 コロナ禍で、それまで使っていたお寺を使うことが難しくなったので、自宅の一室を開放して継続しました。また、一対一の相談のほかに、グループで集まる場も月1回開いています。他者と共に自分自身を振り返り、人生の岐路における重要な決断を後押しし合う関係が生まれてきました。コロナ禍でこれまでの生き方を見つめ直すことになり、家を出ることになったり、職を変える決断をした者がいた時は、共にその門出を祝ったり、引っ越しを手伝ったり。自宅の一室の開放は、「こんな時だからこそ、閉じてはいけない」と、必要にせまられての選択でしたが、結果的にアットホーム感が増し、相談以外でも人が立ち寄りやすくなり、年代を超えて人がつながり、互いに助け合う関係性を育む場へと進化(深化)していきました。

 こういう関係性が、暮らしの安心と充実を創る。こういう関係性を持っている人が増えていくことが、孤立化を防ぐセーフティネット創りが目指すことなのではないかと思いながら、これからも小さな相談室がやれること、小さなサイズだからやれることを模索していきたいと思っています。

 


ここくら相談室 主宰

  あんしん地域見まもりネット/地域連携チーム代表

谷口起代

・・・編集後記もどきでちょっと一言・・・
 

 一般社団法人あんしん地域見守りネットが発行している「かけはし2号」(2021年2月1日)の巻頭言では、地域連携チーム代表として、「いのちと暮らしを守るために、大胆に「共に生きる」関係の創造へ」というタイトルでその頃の思いを書いた。コロナ「騒動」がはじまって1年が経過し、日本においての危機は、感染症の拡大以上に、コミュニティの崩壊、それまで当たり前にあった人と人とのつながりが奪われ、1人1人のこころが凍っていくことへの危惧があった。だから、恐れずに大胆に、それぞれの持ち場において、関係を切らないことへ、殻を破って、発想豊かに、新たな関係を構築していくことへ向かおうという声かけをした。

 

 第5号で紹介させてもらうことになった「ここくら」は、私がコロナ禍において「殻をやぶって」大胆に、訪れる人と共に実験している場所だ。従来の「カウンセリングルーム」の常識を取り払い、敷居の高さを乗り越えて、訪れる人はクライアントというよりはむしろ、共にこの実験に参画する同士という関係になる。しかしながら心理支援の専門性はこちらが有するわけであり、場を共にする入り口は「相談」である。だからこそ、共に実験する者でありながらもこの立場の違いがあることについて、お互いどのように了承しうるのか、しつこいほどに繰り返し繰り返し確認し合う。俗に言う「インフォームド・コンセント」の繰り返し。そこから「ここくら」流の倫理規範がつくられていく。そのようにして、1年、2年とたつと、最初は「相談」という入り口で関わった私と来談者の関係も更新され、卒業する者もいれば、似たような仕事や歩みを切り開きはじめたり、仕事上のパートナーとなる場合もある。

「ここくら」のあり方は、従来の心理専門職が教えられてきた倫理規範にはそぐわない。でも、おそらくだからこそ、このように関係の更新がされていく面白さがある。たとえば、高校に入った時に、小学校の時の担任の先生に成長した姿を見せにいき、何かを確認し合うようなそんなことが、「ここくら」では、もう少し大人バージョンで起こっている。

 コミュニティの崩壊ということを少し俯瞰してみてみると、こうして関係を更新する場がなくなっているという要素が大きいことが見えてくる。そして、思う。日々の暮らしの中で、関係を更新する場があるということは(つまり、日々、変わっていくなかに、その変化を認めあい祝福しあえるという変わらない関係があるということは)、普通に思っている以上に大きく静かに人の根底を支えているのかもしれない。

「ここくら」に一時期通い、その後巣立っていったり、カタチを変えて関わることになった人との関係を振り返ると、「日々の暮らしの中で関係を更新できる場があること」が、その人の人生を支えてきたなと思うことが多い。少なくとも「生きつづけよう」ということへと向かわせてきたと思う(「ここくら」には、ともすれば死を選んでしまいそうな状況にあった人もきていたりするのだ)。

「ここくら」の良さが「暮らしの中で関係の更新ができる場である」ことならば、それは「カウンセリングルーム」での常識を覆すものとなる。でも、今の社会のニーズはこの辺りにありそうな予感がしてならない。ということで「ここくら」を続けながら、「暮らしの中の心理支援」の前例を作りつつ理論的に整理してかねばと思う。

​※一番上の写真が「ここくら相談室」のスペース

※下の3枚の写真は、かつて「ここくら」に月1回通っていたMが開いている「スイーツと感話の会」がはじまる前

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お花も

アレンジ

7月は

​ひまわり

8月は

ほおずき

​がいた

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​かつて「ここくら」通いをしていたMが開催する「スイーツと感話の会」

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